【木星・魚座期/蟹座・満月】光が反射された世界

「・・・これは夢なのか。まるで、かつて自分が人間だった頃の記憶を回想しているかのようだ。」

そこではない別の視座から観ている<あなた>は、かつて神話と呼ばれた物語を今も紡ぎ続けている情動のうねりそのものなのだから。

<わたし>は自分自身を見たい、知りたいという衝動に駆られて、その奥深くまで透き通るような池の水面を夢中で覗き込んだ。

鏡のように水面に映し出されるものを見入っているうちに、いつの間にか自分を見失ってしまった(「現を抜かす」とはまさにこのこと)。

<わたし>は、反射された光によって見せられたものを世界の全てであるとすっかり信じ込んでしまった。

<わたし>はその世界では自分自身を直接、見ることはできなかったが、反射された鏡に映る姿が自分だと思い込んだ。これが自分自身によって自分をその世界に閉じ込めてしまったことに気付かずに。

その世界は真理(本質の実体)が水に反射されただけの幻想なのに。

時間や空間もその世界に閉じ込められた<わたし>によってつくられた。そして、その世界こそが<わたし>にとっての現実であり、そこで体験した記憶を’人生’と呼んだ。

その世界では、多くの惑星に、大自然、膨大な数の多種多様な存在物や人間がいた。特に人間は尽きることのない欲望を満たそうとする中での感情や思考が躍動し、物理的科学技術も発展していき、どこまでいっても果て(終わり)が無かった。

全てが無限に混沌に向かって拡張し続けるしかなかった。時間や宇宙というものが、果てしなく広がり続けるしかなかった。

しかし、その世界は、真理(本質の実体)が反射して’逆さま’に映し出された世界(うつし世)だ。

それがその世界の全ての始まりの因果であり、戻るべき未来でもある。

だから、それを悟った吊るされた男は恍惚の笑みを浮かべている。

「そこが光が反射した世界だというのならば、その光は一体どこから放たれているのか?」

その答えは、紛れもなく、その世界を見ている<わたし>そのもの、つまり「’見ること’自体が光」ということにならないか。

✴︎

これに気付いた<わたし>達は、深い夢から目を覚まし、永遠の真理へ舞い戻るだろう。

しかし、<わたし>達よ、水面を覗き込み過ぎないように気を付けなさい。

今は夜明け前の最も暗い時。

目が眩んで、幻想の水の中に落ちてしまうことのないように。